逃げる

shinshu2003-08-27

先週の土曜、実業団レースの前夜は我が家に京大自転車競技部のコたちが集まって飲んで食べた。
そのとき、信州で活躍した高橋もいて、ご飯の最中に「どうして第1ステージでリーダージャージ着てるのにしょっぱなから逃げたの?」とたずねてみた。
すると、「どうしてリーダージャージを着てたら逃げちゃいけないんですか」と逆にたずねられてしまった。それに対し、思わず言葉がつまってしまった私。自分の浅はかな問いかけにドギマギしてしまった。
そう、「信州は駆け引きなどまったく関係なく、自分の力で走りきる大会」などと普段は言っているのに、ついつい自分の中にこびりついているステージレースのセオリーなんかを持ち出して話している自分がいる。あかんなあ。
高橋は、逃げたかったから、逃げたのだ。リーダージャージを着てるからって初日から守りの走りなんてしたくなかったし、そんなことをしたところで真の王者になんてなれない、ってこと、分かってたのかもしれない。しかも信州は、本物のレースなんかじゃない。ギリギリのところで走り、自分の力を最大限引き出し、ここまでやれるのか!っていうところまで頑張る場所なのだ。白いジャージを着てるからって、じっと集団にいたらいい場所じゃあないんだ。
でも、私が見ていた第1ステージの高橋は、あまりにも早いアタックで消耗してしまい、せっかくの白石との勝負もできないままに負けてしまったように思えた。せめて白石とのデッドヒートを繰り広げられるような場面がその日にあれば、と残念に思ったのだ。
第2ステージは冷たい雨のためリタイヤ。そして第3ステージは、細川と共に逃げて優勝。それはそれで嬉しかったけど、できれば前日のリタイヤは避けてほしかった。本当のステージレースなら、走れなくなるんだぞ。本当にやめないといけない状況だったのか?そう聞きたかったのも正直な気持ちだった。
第1ステージ序盤から独りで逃げた高橋が、どんな気持ちで逃げたのか、私には分からない。その逃げは、本当に逃げる価値があった逃げなのか、それもよく分からない。逃げるって、ただ集団から前に出るだけじゃ意味をなさないんじゃないかな。そんなことを、昨日、録画していたツール・ド・フランスの総集編で、復活を遂げてステージ優勝したときのヴィランクの長い長い逃げを観ながら思った。今度、高橋に会ったら彼にとっての信州の逃げについて、もっと詳しく話を聞かせてもらおう、と思う。